不妊症にならないために1.クラミジア検査

2016.10.26

当院では不妊診療以外に一般婦人科診療もしています。その中で、未婚の女性やまだ妊娠していない患者さんには、特に症状とは関係なくても

「クラミジアの検査をしたことはありますか?」

「クラミジア検査をしませんか?」

とクラミジア検査を勧めています。

クラミジア感染は主に性行為で感染するいわゆる性行為感染症です。男性、女性ともにセックスにより生殖器に感染しますが、男性の場合は軽い尿道違和感など症状が軽い場合も多く、女性も異常帯下や少量の出血、排卵や月経周期とは関係ない軽い下腹部痛などやはり症状が軽微で放置されていることが多い病気です。また、オーラルセックスの普及で咽頭(のどの粘膜)感染を認めることも多く、性風俗店などでの感染もあります。

下のグラフは厚生労働省で発表しているデータをグラフにしたものです。

クラミジア感染年次推移
一時よりはかなり減少傾向にありますが、未だ臨床の現場ではよく見ます。
 減少の理由はあまりよくわかっていませんが自分的には平成16年よりジスロマックという薬が認可され、1回の内服で治療が可能になったことにより治療が簡便になり、治療率が上がっているのではないかと思っています。


クラミジア感染と不妊

 女性では主に子宮頸管で感染しますが、やがて上行感染をおこして、卵管周囲、付属器や肝臓周囲にまで感染、炎症を起こします。それにより卵管の癒着、閉塞、肝周囲膿瘍や癒着となり、子宮外妊娠や不妊症となる可能性が高くなります。女性不妊原因で卵管性不妊は上位の原因であり、特にクラミジア感染によるものがほとんどです。治療は抗生物質の内服で治りますが、パートナーも感染していることが多く、治療後再感染してしまうことも多いので一緒に治療することが大切になります。しかし、すでに癒着や閉塞をしてしまった卵管や付属器はクラミジアを退治しても治りません。妊娠を希望しなければそのままでも問題ないことが多いのですが、卵管障害による不妊であった場合は、手術による治療や場合によっては卵管の切除を要することもあります。一昔前、両側卵管切除はほぼ永久不妊を意味する言葉でした。現在で体外受精という技術があるので妊娠は可能です。しかし、そうなる前にできるだけ早く見つけて治療をしておく方が良いと思います。基本的には何の症状もないスクリーニングで行う検査は自費になります。しかし、気になる症状があるときは積極的に検査することが大切と思っています。

検査は頸管粘液で調べる方法と採血で調べる方法があります。ともにほとんど痛みはない検査ですし、治療も内服1回のみですから結婚や妊娠を希望する前でも定期的に検査をして、少しでも不妊の芽は摘んでおきましょう。