不妊症?まずは卵管造影・卵巣年齢・精液検査!
こころの通うオーダーメイドの治療をあなたに
結婚をして、妊娠したいと思う一方、子供ができないと悩みを持つ方は沢山います。最近では妊活という言葉もあるように以前よりは産婦人科治療としての不妊治療の認知度も高くなり不妊治療外来に受診するかたも多くなりました。しかし希望する治療内容も異なり、不妊検査・不妊原因の確認のみ希望の方や、排卵の確認のみ希望の方、タイミング療法や不妊漢方治療などマイルドな治療を望む方、体外受精などの高度生殖医療まで希望する人などさまざまです。体外受精専門のクリニックも増え、一般不妊治療は行わないクリニックも多数出てきました。体に負担が少ない自然周期採卵のみを行う施設もあります。しかしどの治療も一長一短があり、どの治療が患者様にとって最も効率がよい治療法なのかを考えて選ばないと限られた妊娠期間を有効に使えないこともあります。
どのような治療を選ぶにせよある期間妊娠を希望してできない方は一度検査をすることをお勧めします。自分だけが原因とは限らず、たとえ二人目不妊であっても精液検査で男性不妊(乏精子症・無精子症)が見つかり、顕微授精が必要な症例も多々あります。不妊対策は早めにすることが大切です。自分が不妊かもしれないと思った方は悩まずにまずは相談を。私をはじめ看護師、培養士ともどもこころからお待ちしております。通いやすいストレスの少ない不妊治療を提供できるよう努力していきたいと思っています。
不妊症にならないために1.クラミジア検査
当院では不妊診療以外に一般婦人科診療もしています。その中で、未婚の女性やまだ妊娠していない患者さんには、特に症状とは関係なくても
「クラミジアの検査をしたことはありますか?」
「クラミジア検査をしませんか?」
とクラミジア検査を勧めています。
クラミジア感染は主に性行為で感染するいわゆる性行為感染症です。男性、女性ともにセックスにより生殖器に感染しますが、男性の場合は軽い尿道違和感など症状が軽い場合も多く、女性も異常帯下や少量の出血、排卵や月経周期とは関係ない軽い下腹部痛などやはり症状が軽微で放置されていることが多い病気です。また、オーラルセックスの普及で咽頭(のどの粘膜)感染を認めることも多く、性風俗店などでの感染もあります。
下のグラフは厚生労働省で発表しているデータをグラフにしたものです。
減少の理由はあまりよくわかっていませんが自分的には平成16年よりジスロマックという薬が認可され、1回の内服で治療が可能になったことにより治療が簡便になり、治療率が上がっているのではないかと思っています。
クラミジア感染と不妊
女性では主に子宮頸管で感染しますが、やがて上行感染をおこして、卵管周囲、付属器や肝臓周囲にまで感染、炎症を起こします。それにより卵管の癒着、閉塞、肝周囲膿瘍や癒着となり、子宮外妊娠や不妊症となる可能性が高くなります。女性不妊原因で卵管性不妊は上位の原因であり、特にクラミジア感染によるものがほとんどです。治療は抗生物質の内服で治りますが、パートナーも感染していることが多く、治療後再感染してしまうことも多いので一緒に治療することが大切になります。しかし、すでに癒着や閉塞をしてしまった卵管や付属器はクラミジアを退治しても治りません。妊娠を希望しなければそのままでも問題ないことが多いのですが、卵管障害による不妊であった場合は、手術による治療や場合によっては卵管の切除を要することもあります。一昔前、両側卵管切除はほぼ永久不妊を意味する言葉でした。現在で体外受精という技術があるので妊娠は可能です。しかし、そうなる前にできるだけ早く見つけて治療をしておく方が良いと思います。基本的には何の症状もないスクリーニングで行う検査は自費になります。しかし、気になる症状があるときは積極的に検査することが大切と思っています。
検査は頸管粘液で調べる方法と採血で調べる方法があります。ともにほとんど痛みはない検査ですし、治療も内服1回のみですから結婚や妊娠を希望する前でも定期的に検査をして、少しでも不妊の芽は摘んでおきましょう。
妊娠しやすいタイミング
排卵された卵子の寿命は短く、半日から1日くらいで受精能を失ってしまいます。
一方精子はわりと卵管のなかでは長生きのようです。
卵巣年齢と卵子の老化
卵子の老化と卵巣年齢という言葉が出てきます。
一見同じような感じですが、表現していることが違います。
卵巣年齢:
年齢とともに急激に減少していく残存卵子の量を
主に抗ミューラー管ホルモン(anti Müllerian hormone:AMH)の
値を参考に推測するものです。これは卵の質(クオリティー)を
示すものではありません。
卵子の老化:
これは卵の質(クオリティー)について表現したものです。
染色体や遺伝子異常
卵細胞質の変性
ミトコンドリアの機能の劣化 etc.最近ではミトコンドリアや細胞質が若い第三者の受精卵の核を除去し、自分の受精卵の染色体(前核)を移植して妊娠させる方法が成功したと報告されました。夫と遺伝子としての母、ミトコンドリアを提供した母の3人が遺伝的な親になります。安全性に関してはこれから検証されていくことになります。
加齢と卵子の染色体異常
加齢とともに卵子は激減していく
上のグラフからも年齢とともに卵胞が減少しているのがわかりますが、上のグラフは対数グラフです。
目読みで通常のグラフに変換してみると
25歳以降急激に卵子は減少していきます。40歳前半からもさらに減少があり閉経へと進みます。
卵巣刺激しても体外受精時に取れる卵子の数は減少していきます。
一見排卵する卵子は「選ばれしもの」のように思われがちですが、良い卵子だから選ばれるということではありません。自然に排卵したからと言って一番良い卵子というわけではないようです。これはいずれお話する体外受精治療においての「自然で育った卵胞だからいい卵子というわけではない」という流れにつながっていきます。
一度の採卵で3回の出産
当院の採卵・胚移植で妊娠・出産した患者様が二人目妊娠希望で再受診され、以前に凍結保存をした胚を移植して、採卵なしで二人目を妊娠・出産する患者さんは多くいますが、いよいよ3人目トライで移植をする人も増えてきました。ある患者様は採卵1回、移植3回で3回妊娠分娩となり、一回の不成功もなく3人出産されました。
当然一人目、二人目妊娠・分娩して、目標を達成した場合残りの胚を廃棄することにはなりますが(実際10個以上の凍結胚盤胞がある状態での廃棄希望の場合もあります)、移植しても妊娠しなかったり、化学的妊娠や流産などで分娩に至らなかったりしてさらなる移植を要する症例も多く、今より若いころの凍結胚盤胞の数が多ければ、それだけ体の負担が少なく妊娠トライができます。
実際当院でも2人目妊娠希望で以前の凍結保存胚を移植し、初回・2回目が科学的妊娠や流産で分娩に至らず3回目の移植で分娩にいたるようなケースも多くあり、多くの胚盤胞を凍結保存していることの有用性を感じています。
2人目、3人目妊娠で卒業されいてく患者様を診ていると不妊治療が多少なりとも少子化対策に貢献できているかな?と思う今日この頃です。
性交頻度と妊孕性
月経終了後から排卵翌日まで連日性交した場合→37%
1日おきで性交した場合→33%、
1週間に1回のみの場合→15%