城南レディースクリニック品川

子宮内膜フローラ検査

子宮内膜フローラ検査について

私たちの膣や子宮内には様々な種類の細菌が多数存在し、環境を整えています。
この細菌の集団を顕微鏡下で観察するとお花畑のように見えることから子宮内フローラと呼ばれています。

子宮内フローラには女性の妊娠や出産に影響を与える善玉菌と悪玉菌がいます。
子宮内膜フローラ検査とは、善玉菌・ラクトバチルス属菌の割合を調べることで、子宮内環境を知ることができる検査です。

検査を受けるメリット

悪玉菌が多く存在する生殖器内は炎症が起きている可能性があり、免疫機能が働くため受精卵を異物として排除します。その場合にも、善玉菌であるラクトバチルスには、糖を分解し乳酸を産生することで、生殖器内を酸性に保ち、悪玉菌の増殖を抑える働きがあります。

  • 善玉菌・ラクトバチルス属菌の割合がわかる
  • 常在菌、細菌性腟症の原因菌の存在と割合がわかる
  • 子宮内フローラのバランスを知ることで対応策を考えられる

検査の流れ

  • STEP01
    検査説明

    検査説明

    医師から検査についての説明を行い、納得した上で検査を行なっていただきます。

  • STEP02
    検体採取

    検体採取

    子宮内から検体を採取します。

  • STEP03
    検査

    検査

    検体からDNAを抽出し、検査装置にかけます。

  • STEP04
    結果報告

    結果報告

    15営業日後に、医師から結果を報告します。

提供元:Varinos株式会社

費用について

本検査は、自費での検査となりますが、高度先進医療として認められているので、保険による体外受精治療との併用が許可されています。

子宮内膜フローラ検査 40,000 円

※すべて税抜価格です。別途消費税がかかります。

検査対象

  • これから妊娠を望むすべての方
  • 不妊治療を受けていても妊娠しない方
  • 良好胚を移植しても妊娠しない方
  • 流産・早産経験がある、または繰り返している方

ご興味をお持ちの方は、まずはお気軽にご相談ください。

当院での実績

子宮内フローラと乳酸菌(ラクトバチルス)

古くより子宮の中(子宮内腔)は無菌であると思われてきましたが、子宮のなかにも細菌がいて(Franasiak JM, et al., JARG 2016)、さらに腸などの様に子宮にも適切な細菌環境があることが言われるようになりました。特に乳酸菌のひとつであるラクトバチルス(Lactobacillus)が妊娠成立に必要であることが言われるようになりました(MorenoI, et al., Am J Obstet Gynecol 2016)。このような子宮内の細菌叢の状態を子宮内フローラと呼びます。

ラクトバチルスの中でもL.crispatusとL.gasseriが重要とされています。
また慢性子宮内膜炎の患者さんの子宮内ではラクトバチルスが低いことが指摘されており、慢性子宮内膜炎の無いグループではL. crispatusが高いことが報告されています(Yingyu Liue al.Fertil Steli 2019)。子宮内フローラ正常群に比べて子宮内フローラが異常な群では妊娠率や生児獲得率が低いことが認められています。

当院では
・慢性子宮内膜炎を認める症例や
・体外受精・胚移植や凍結融解胚盤胞移植の反復不成功例などの難治性症例
に対し子宮内膜細菌環境(細菌叢)の検査をしています。

検査結果について

当院ではVarinos社の子宮内フローラ検査を用いています。
結果は次の様の形で帰ってきます。

ラクトバチルスや他の有害な菌の割合が表示され、
・ラクトバチルス率90%以上
LDM(Lactobacillus Dominant Microbiota)
・ラクトバチルス率90%未満
NLDM(Non- Lactobacillus Dominant Microbiota)
と分類してLDMを良好な状態と判定しています。

Varions検査の良いところは菌の種類だけではなく、病原性の高い菌に感受性がある抗生剤を示してくれます。他社のEMMAとALICEを同時行えるような検査です。

一般に慢性子宮内膜炎にはビブラマイシンが第一選択とされますが、それでは治癒できない症例も多く、第二選択としてシタフロキサシンやメトロニダゾールが選択されます。
むやみ抗生剤を長期投与することは耐性菌を作るリスクもあり問題があります。子宮内フローラ検査で原因菌を確定し、それに有用な抗生剤を選択することは有効な治療法となり得ます。
この検査の良いところは、ラクトバチルスの種類も検査されており、ラクトバチルス優位の状況の中でも、善玉とされるL.crispatusがちゃんとメインでいるのかも判定できます。

NLDM症例に対する治療

プレバイオティクスとしての治療
腸内の善玉菌の増殖を促す食物繊維やオリゴ糖などのことを指します。
子宮内フローラの改善目的ではプロバイオティクスとしてラクトフェリンを投与します。
ラクトフェリンは鉄結合性糖タンパク質で母乳や頸管粘液に含まれます。
悪玉菌は増殖するのに鉄を必要とすると言われています。ラクトフェリンは、鉄と結合することで悪玉菌には鉄を渡さず、体内には吸収してくれると考えられています。ラクトバチルス属は増殖に鉄を必要としないためラクトフェリンはラクトバチルス優位の環境を作るとされています。

「膣内なのになぜ内服?」と思われる方も多いともいますが腸内と子宮内環境は密接していることが言われており腸内環境のケアーも重要であるとされています。

とはいえやはり善玉菌での治療をしたいと思うのが自然ですよね。

当院ではプロバイオティクスとしてラクトバチルスそのものの投与による治療を優先させています。
プロバイオティクスとは、微生物(善玉菌)を含む食品やサプリメントのことを言います。
当院ではラクトバチルスの中でも特に大切とされるL.reuteri、L. rhamnosus、L. crispatusを含んだ内服薬と膣錠の両方をを用いて治療しています。

実際以下の症例は良好凍結融解胚盤胞3回移植しても妊娠に至らず、子宮内フローラ検査にて異常を認めたため治療を行い、内膜フローラ治療後初回の移植で妊娠・分娩に至っています。

当院では積極的に子宮内フローラ検査・治療を行っています。ご希望の方は是非ご相談ください。