先進医療

保険の治療に対して、自費の治療を併用することは禁じられています(混合診療)。先進医療とはエビデンス不足等により保険適応とはならなかった治療の内、保険体外受精治療と併用が許可された治療です。
子宮内フローラ検査
子宮内フローラと乳酸菌(ラクトバチルス)
 古くより子宮の中(子宮内腔)は無菌であると思われてきましたが、子宮のなかにも細菌がいて(Franasiak JM, et al., JARG 2016)、さらに腸などの様に子宮にも適切な細菌環境があることが言われるようになりました。特に乳酸菌のひとつであるラクトバチルス(Lactobacillus)が妊娠成立に必要であることが言われるようになりました(Moreno I, et al., Am J Obstet Gynecol 2016) 。このような子宮内の細菌叢の状態を子宮内フローラと呼びます。
図1子宮内環境悪玉善玉菌
ラクトバチルスの中でもL.crispatusとL.gasseriが重要とされています。
また慢性子宮内膜炎の患者さんの子宮内ではラクトバチルスが低いことが指摘されており、慢性子宮内膜炎の無いグループではL. crispatusが高いことが報告されています(Yingyu Liue al.Fertil Steli 2019)。子宮内フローラ正常群に比べて子宮内フローラが異常な群では妊娠率や生児獲得率が低いことが認められています。 
図2ラクトバチルス妊娠出産への影響varinos社提供
当院では
慢性子宮内膜炎を認める症例や
・体外受精・胚移植や凍結融解胚盤胞移植の反復不成功例などの
難治性症例
に対し子宮内膜細菌環境(細菌叢)の検査をしています。

当院ではVarinos社の子宮内フローラ検査を用いています。 
 結果は次の様の形で帰ってきます。 
図3フローラ結果73.2%NLDM例
ラクトバチルスや他の有害な菌の割合が表示され

ラクトバチルス率90%以上
    
LDM(Lactobacillus Dominant Microbiota)

ラクトバチルス率
90%未満
  NLDM(Non- Lactobacillus Dominant Microbiota)

と分類してLDMを良好な状態と判定しています。

Varions検査の良いところは菌の種類だけではなく、病原性の高い菌に感受性がある抗生剤を示してくれます。他社のEMMAとALICEを同時行えるような検査です。

一般に慢性子宮内膜炎にはビブラマイシンが第一選択とされますが、それでは治癒できない症例も多く、第二選択としてシタフロキサシンやメトロニダゾールが選択されます。
むやみ抗生剤を長期投与することは耐性菌を作るリスクもあり問題があります。子宮内フローラ検査で原因菌を確定し、それに有用な抗生剤を選択することは有効な治療法となり得ます。
この検査の良いところは、ラクトバチルスの種類も検査されており、
ラクトバチルス優位の状況の中でも、善玉とされるL.crispatusがちゃんとメインでいるのかも判定できます。 
図4varinos LDM 99.8%
図5varinos結果種名
NLDM症例に対する治療 
プレバイオティクスとしての治療
腸内の善玉菌の増殖を促す食物繊維やオリゴ糖などのことを指します。
子宮内フローラの改善目的ではプロバイオティクスとしてラクトフェリンを投与します。
ラクトフェリンは鉄結合性糖タンパク質で母乳や頸管粘液に含まれます。
悪玉菌は増殖するのに鉄を必要とすると言われています。ラクトフェリンは、鉄と結合することで悪玉菌には鉄を渡さず、体内には吸収してくれると考えられています。ラクトバチルス属は増殖に鉄を必要としないためラクトフェリンはラクトバチルス優位の環境を作るとされています。

膣内なのになぜ内服?
と思われる方も多いともいますが腸内と子宮内環境は密接していることが言われており腸内環境のケアーも重要であるとされています。

とはいえやはり善玉菌での治療をしたいと思うのが自然ですよね 

当院ではプロバイオティクスとしてラクトバチルスそのものの投与による治療を優先させています。 
プロバイオティクスとは、微生物(善玉菌)を含む食品やサプリメントのことを言います。 
当院ではラクトバチルスの中でも特に大切とされるL.reuteri、L. rhamnosus、L. crispatusを含んだ内服薬と膣錠の両方をを用いて治療しています。 
図6ラクトフェリン・ラクトフローラ
実際以下の症例は良好凍結融解胚盤胞3回移植しても妊娠に至らず、子宮内フローラ検査にて異常を認めたため治療を行い、内膜フローラ治療後初回の移植で妊娠・分娩に至っています。
フローラ治癒症例
当院では積極的に子宮内フローラ検査・治療を行っています。ご希望の方は是非ご相談ください。