人工授精

一般に人工授精( Artificial Insemination by Husband =AIH)とよばれますが、海外では子宮内授精(intrauterine insemination=IUI)と表記される不妊治療です。

「人工」という言葉に過剰に反応する人もいるので私的には子宮内授精もしくは子宮内精子注入法と評してIUIを使う方が好きです。

腟内に射精された精子は子宮頸管内の頸管粘液を泳いで子宮内腔を通り、卵管を通過して卵管膨大部に達します。通常健康男性の精液は1mlあたり1億以上の精子が存在し、卵管膨大部へは50~100個程度の精子が到達するとされます。正常精液量は2ml以上なので精子は100万分の1程度しか卵管に届かないことになります。

人工授精では2~3mlの精液中の精子を洗浄抽出し、0.5ml程度の量にまで濃縮します。それを排卵前日もしくは排卵日に子宮内腔に注入することにより精子の卵管への到達数を高めることを目的としています。精子は自力で卵管膨大部へ達し、自然と同じ状況で受精をします。

術前検査

処置による感染を防ぐため、原則としてB型肝炎、C型肝炎、梅毒、HIV(原則自費検査 5000円程度)、およびクラミジアをご夫婦ともに検査します(1年以内に検査があれば省略可能)。

適応

おもに自然もしくは排卵誘発により排卵が可能であり、卵管に異常がなく、タイミング療法では妊娠に至れない患者さんが適応になります。

・複数回のタイミング療法不成功例
・性行後検査(ヒューナー検査)不良例
・乏精子症
・性行障害・ED etc.

方法

精子の洗浄・濃縮

人工授精当日マスターベーションにより採取した精液を専用の洗浄・培養液で遠心濃縮をし、培養液で0.5mlに量を調整します。
これにより精液中の精漿(精液の精子以外の液体成分)や不純物(ゴミ、細菌、白血球 etc.)を可能な限り除去します。

これにより精子は高純度で濃縮されます。
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子宮内精子注入

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通常の内診台で行います。
超音波検査で排卵の状態の確認と、子宮の位置と方向を確認します。
腟内を生理食塩水で洗浄後、専用のカテーテルで子宮内に注入します。その後内診台上で約5分程度安静を取ります。

基本的には軟性のカテーテルを使用していますので痛みはほとんどありませんが、挿入が困難な場合は、やや硬めのカテーテルを使用したり子宮頸管の方向を確認するためにゾンデ(消息子)診を行う場合があり、若干の痛みを伴うこともあります。

料金

手技料は自費で
18000円(税別)です。
(別途自費再診料がかかります。)

治療成績

一般に人工授精における妊娠率は一回あたり8~10%程度であり、5回前後の施行により15~20%の人が妊娠に至るとされています。人工授精で妊娠した人の85%が3回以内、95%以上が5回以内に妊娠しているとされ、一般には3~5回を治療の目安として行っています。それにより妊娠が成立しない場合は体外受精等の別の治療の適応と考えます。

副作用・留意事項

もっとも可能性のある副作用は子宮内感染症です。精液処理により可能な限り細菌等を除去していますが、残留した細菌やウイルス、処置時における腟内細菌による感染。また培養液、抗生剤へのアレルギー反応によっても炎症反応が出ることがあります。充分留意し処置時に抗生物質の1日内服も行っていますが、避け得ない場合もあることをご了承ください。

また、精液の量や精子の性状によっては濃縮できず、数値的に下がることもあります。その場合でも子宮腔内に注入することにより通常の性交渉よりも多い数の精子が卵管膨大部へ到達できると考えています。